第8話
「…ふーん…」
はい。コーヒー。
ことり、と、音をさせて、ベッドのそばのローテーブルに黒いマグカップをふたつ、載せた、
鼻を突く、やわらかでそれでいて、濃く深いコーヒーの香り。
あわてて、ベッドの上や下に散らばっていた衣服を探す。
ショーツやジーンズやロンティーは見つかったの、に。
「もしかして、これー?」
伊織くんの人差しゆびに、ひっかかっている、レースたっぷりの、ショーツとおそろいの、白いブラジャー。
午後の日差しにさらされているそれ、は。
場違いも甚だしい。
久しぶりにショップで選んだ上下の下着。
25才のオトコに見せるために、30オーバーのオンナが選ぶシロモノか…?
急に襲ってくる、羞恥心。
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