第51話

そこまで妻がタイピングしたのを見て、伊佐木は妻の手をキーボードから打ち払う。


「やめやめ、素人は手を出さない」


「ま、失礼ね!」

「ごめんごめん」

そうご立腹の妻に伊佐木が謝ると、伊佐木は言葉を続ける。

「やっぱり、こういうのはプロがやらないとね。メールアドレスをそのまま自前を使うのも危険だね」


二人が話し込んでいると、きーんと飛行機の恰好で、さつきが二人の間を駆け回る。


「われらがヒーロー家族、ヒーローヒーロー♪」


「やめなさい、この間はなさんに殺されそうになったばかりでしょう?」

と妻。

「私も戦ってるのよ」

とさつき。

「どういう戦法よ」

と苦笑う。こういう戦法。


「死ね!はな!」


さつきは、先日伊佐木が確保していたはなの写真グラビア付き下敷きの鼻の下に鼻毛をマジックで書き始める。

「やめなさい、何が起こるかわからないわよ」

と叫ぶ妻。


「死ね!死ね!死ね!はな」

さつきは叫ぶ。


「気持ちはわかるけど、殺人鬼の気持ちを逆なでしてどうする」

飽きれる伊佐木。


「ぐあぁぁぁぁ」


悶絶しながら叫ぶさつき。

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