第45話

「あなたこのこが殺人鬼なの?」

「うん」

と伊佐木。


「かわいいわね」

「うん」

「若いのに」

「処女を捨てさせたのはまずいな」


妻を見やる伊佐木。

「お前は処女だったんだっけ?」

「そうよ」

「お前は幸せだ」

「そうね」

妻が頭を伊佐木の肩にもたれさせる。


DVDの中のはなは歌い続ける。踊り続ける。妻はうとうとしている。伊佐木は妻のうたたねを魔しないよう、小声でつぶやく。

「お前が人類の敵、私はヒーロー、お前倒す!」


伊佐木は翌日、仕事先でとある教会に立ち寄った。そうして、買いあさったものを自宅へ持ち帰る。

「おい、これ」


妻に見せたのは十字架たちだった。

「え?なに?」

「よくわからないけれど、日本にサターンがいるらしい、はなの操る殺戮衛星がサタンかバベルの塔かもしれない」


「それで」

「そう」

そこまで言って、家族に十字架を首からぶら下げさせると今度は、伊佐木はこう言い出した。


「さつき、おなかを見せなさい。ほら、服をめくって」

「え?やだ痴漢?」

変な反応で返すさつき。

「違う」

伊佐木は自分の腹を服をめくって見せる。するとそこにはマジックで描かれた十字架が。

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