第46話

「ネックレスだと、肌身離さずとは行かないだろう?書かせろ」


「やだー」

「さつき、こっちにいらっしゃい」

妻に誘導され、陰で十字架を書いてもらっている。


「これから先はいつもそうしてろ」

と伊佐木。


―翌日。職場。まだ迷っている伊佐木は、編集長に何も告げられない。そこで、松澤大樹のもとに向かう伊佐木。


「松澤先生、我々を殺そうとしている衛星はバベルの塔だと感じませんか?」

と伊佐木。


「サタンでしょうか?」

「さぁ、どうかな?」

淡々と返事をする松澤大樹に、伊佐木は十字架のネックレスを差し出す。


「先生にも、お守り代わりにこれを渡そうと思って。これを肌身離さずつけてください」


伊佐木はさらに言葉を続ける。

「先生、殺人犯のめぼしはついているんですが、以前お話しした、日野咲はなというモデルをご存知ですか?」

松澤大樹の色眼鏡の奥の眼光が光る。


「おい、わしを巻き込む気か?」

「どうして?」

「殺人鬼の名前まで聞いたら、わしが殺される」


「先生と僕の仲じゃないですか?」

「う」

「先生は命がけで統合失調症を救ってたんでしょう?」


そう立ち上がって弁をふるう伊佐木。


「ヒーローですねぇ」

そこまで語ると、お土産のアンパンを差し出す伊佐木。二人であんぱんと牛乳を平らげながら語り合う。

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