第43話

「何が?」

と妻。

「またさつきは勉強もせずにネットしてたの?!」

としかる母。


「げ、まず」


焦るさつきに伊佐木。

「おい、その人類愛人類愛ってなんだ」

「あのね、あのね、お父さんのカバラの占い結果が、人類愛人類愛勇気なんだって!」

とさつき。


嬉しそうにさつきは言葉を続けた。満面の笑みだ。

「お父さん!ヒーローだね!ヒーロー活動しないと!」

「え?」


と伊佐木。

「まぁ」

と妻。しばしの沈黙と共に、妻が言う。


「あなた、どんな敵か分からないけれど、戦えば?」

妻は淡々と言葉を続ける。


「倒せば?そのはなさんを」

「あ」

妻の切り返しに驚く伊佐木。

「あ」

伊佐木は次なる言葉を紡ぎ出せない。


「何?何?何の話?」

さつきが二人のはざまで二人の顔を交互にのぞき込む。


「お父さんが倒すんだって。殺戮衛星を、脳内ハッキングの犯人を」

と妻。ほほ笑む。

「私、離婚しないから、ヒーローのごはんを作らなきゃならないしね」

妻のウインク。

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