第4話

「なるほど、なるほど」


メモを読み進めながらつぶやく伊佐木はしばらく読み進め、そうして、夫人を見やって言う。


「不倫の出会い系マニュアルはカスかもしれませんが、この統合失調症の闘病日記は、確かに価値ある日記かもしれません」


とうとう伊佐木が言い放った。輝く夫人の目。喜びを隠しえない。


「不倫の出会い系マニュアルのメモと、統合失調症の闘病日記、どちらも預かりましょう」


伊佐木の言葉。

「ほ、ほんとうですか?」

「検討します!不倫の出会い系マニュアルはまず本にはしませんが」

「ありがとうございます!ありがとうございます!」


伊佐木の言葉に何度も頭を下げる夫人。


そうして、夫人が立ち去った後、

「不倫の出会い系マニュアルねぇ!」

と伊佐木は苦笑う。


「どうだった?」

応接室を出てきた伊佐木に編集長が声をかける。


「なかなかいい情報をGET!しました!統合失調症にまつわる本、出せるかもしれませんね!」

「そうか、そいつはなにより!」

「任せてください!」


「統合失調症ねぇ!」

独り言をつぶやく伊佐木。

「幻聴、幻覚かぁ!ドラッグの世界だなぁ!」

と伊佐木。メモを見やる。


―その3日後、

伊佐木は絶叫する。明け方布団の中で幻聴が聞こえ始める。

『お前は、天に背いた、ごみだ!』

『死ね死ね死ね死ね死ね!』


伊佐木は寝室のベッド周りをぐるり見回す。妻は一足先に早く起き、伊佐木とその子供たちのお弁当を作っている。当然のごとく、寝室のテレビは電源が切られたままだ。


「なに、これ?」

『しーね!しーね!しーね!』

「なに、これ、え?幽霊?」

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