14.日本武道館

第22話

2万人もの観客が

ステージ中央の

ミュージシャン

いのりを見つめていた。


いのりは

聴衆に迎えられ、

口を開く。


それはMCとしては、

意外だったかもしれない。

いいえ、今の時代を思うと

当然だと思う人も居るでしょう。


「音楽の力で

世界を救済できると

俺たちは信じて来た!


お前らも

気付いているかもしれない。

バックヤードのスタッフから

プロデューサーから

俺らステージに立つメンバーから

本気で頑張って来た!」


そこまで言うと

いのりは肩にかけていた、

スカーフを観客席に向かって

投げる。


歓声があがり、

必死にそれを取ろうとする

ファン。


「お前ら、聴いたろ?

ザ・ワールドを。

俺たちは世界を救う!

俺たちは世界を救える!

お前たちが世界を救う!

お前たちは世界を救える!」


力強いいのりの

言葉に歓声が上がる。


再びマイクを持ち、

観客を見つめるいのり。


「お前たちは

俺たちの言葉を今、

真摯に聴いてくれてるでしょう?

音楽もたっくさん聴いてくれるし。


だから、俺たちは、

俺たちの力を信じて来れた。

お前たちは、本気で

世界の平和を願ってくれるでしょう?」


そこまで言うと

一曲かますいのりたち。


ザ・ワールドが終わると

マイクを持ち頭を下げるいのり。


「ごめんなさい、

世界を救えなくて。

全部、俺たちの力不足です」


リモートで

生放送を観ている観客は

100万を超える。


観客、その中で

一人が立ち上がり、叫ぶ。


「カルマン大統領に

電話すれば!!」


はっとするいのりに

その観客はまだまだ言葉を

続ける。


「いのりならできるよ!

いのりはBIGだし!


直接話しかけて、

核ボタンを押さないように

お願いしたら?」


観客に話しかける

いのり。


「ははは、力を買って

くれてありがとう!

でも、もうだめだ」


いのりの目に涙が光る。


「あきらめないで!

あきらめないで! いのり!」


別の観客も次々と

立ち上がる。


「いーのーり!

いーのーり!」


一斉に声が上がる。


それはうねりのように

ひろがる。これで自分たちの

力を信じて来れたいのりたち。


そこにちらほら

混じる観客の声。


「電話会談!

電話会談!」


「リモート会談!

いのり! リモート会談!」


観衆の叫び!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る