04.新婚夫婦

第9話

「目をあけてごらん!」


それまで、

夫に両目を閉じるように

指示され、


2人のデートから

自宅に帰ってきた、新妻。

斉藤美鈴だ。


美鈴の肩に

両手を添える。

斉藤静雄。


どうやら自宅の

リビングにまで

手を引いてこられたようだ。


美鈴は両目をあける。


「わぁ!!!!」


とたんに明るくなる、

美鈴の顔。

リビングいっぱいに広がる

バラの花束。赤い赤い

情熱のバラたち。


「部屋に入るだけの

バラというバラを

宅配してもらった」


そこまで斉藤が言うと


「あなた」


美鈴が嬉しそうに

斉藤に腕組んでくる。


「明日はアイルに

核弾頭が落ちる。

この日本も被ばくする

かもしれない。


この中なら、

怖くないだろう?

一緒にキスをして過ごそう」


そう言うと

新妻の美鈴を抱き寄せる斉藤。

2人はキスをする。


「こうやって

2人でキスをしていれば、

放射能で死ぬのも怖くない」


「素敵!」


抱き合う夫妻。

2人の間には、まだ

子供がいなかった。

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