第5話

頭をかきむしる。


「はぁ! はぁ! はぁはぁ!」


痛みをこらえ、

呼吸を粗くする伊織。


だが、次の瞬間、

伊織はとあるニュースに

遭遇する。


それは、イリアのニュース。

カルマン大統領が

アイルに核弾頭を明日の正午に

撃ち込むというニュース。


ネット記者の伊織に

比べれば随分と遅い報道だが…


「キリトじゃないなら、

一体誰なんだ!」


『それは言えない。

だが統合失調症の患者だと

いうことだけ告げておこう』


「悪かったよ!

もうキリトをぶった切らないから」


そこまで言っても

まだ拷問を食らう伊織。

脳の奥がきゅぅぅぅううう!っと

絞られる異常感覚に

襲われる。


「ううううう!

なんなんだ、なんで

俺がこんな目に遭わなきゃ

ならないんだ!」


戦争のニュースが

背中で流れ続ける。


はっとする伊織。

ちょっと前とは

ちょっと違った口調で

語りだす。


「お前さぁ!

いっちょカルマン大統領に

かますか?


カルマン大統領の脳みそに

直接話しかけるんだよ。

我ながらいいアイデアだ!


<戦争反対! 戦争反対!

戦争を止めるまで、眠れませーん!>」


頭痛は相変わらずのまま。

頭を軽くかきむしりながら

伊織。


「<ピーポーパーポー!

精神病院に行きますか?

大統領を退陣してください!>

って


イリア語で、脳にぶちかますか?

どう? 戦争を止められる気がしねぇ?


後は讃美歌でも

脳に流しとけ。

戦争を止めるまで、

エンドレスにな。で、一切

眠れないようにしとけ。

すぐに音をあげるだろう?」


そこまで叫ぶと

伊織は不敵に笑う。なかなか

いいアイデアだと思ったのだろうか?

伊織は言葉を続ける。


「お前もしがない一記者を

しょぼく叩いているじゃなくって、

歴史に残る偉業を成し遂げろよ?

貰えないだろうけど、

ノーベル平和賞だ!」


そこまで叫んで

一息つく。

だけど脳に

何の反応も返って

こない。


「なんで、無言なんだよ!

いつも応答してるじゃねーか!」


そこまで伊織が叫ぶと

再び脳への拷問が

力を帯びる。


「ぐぉぉぉぉおぉおぉ!」


再び苦しみだす伊織。

床に突っ伏す。

悶えながら叫ぶ伊織。


「はぁはぁ!

そうするとカルマン大統領が

核兵器のボタンを予告前に

押すかもしれないから、


その時は、今の俺に対する

脳攻撃以上の攻撃をかまして、

時と場合によっては殺せ!」


拷問をずうっと

かまされ続けているせいか

語調が厳しい。

ことさら「殺せ!」という

単語に力を込めた。

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