六章:生き延びた少年は

第11話

穴だらけの壁、そして、引き裂かれた布団の綿が飛び散り、ハムスター小屋ようなありさまとなっている6畳間の部屋で、カーテンを締め切り、少年は一人丸まっていた。




(無理やり変な約束させられちゃった。今日終わるはずだった僕の命が、10年ものびてしまった。明日どころの話じゃない。)




 見知らぬ男との単なる口約束である。別の日を選んで同じビルの屋上から飛び降りてもいいわけだし、また、別のビルを探して飛び降りることもできた。けれど、今の少年には、なぜかそんな気が起きなかった。




10年という寿命のリミットを設定されたおかげで、生きる勇気という程でもないが、まだ生きてもいいかもしれないと、思え始めたのだ。




(10年後死んで良いのなら、そんなに怖くないかもしれない。)




 自らあけた、痛々しい壁の穴ぼこの淵を手でなぞる少年。少年が手で軽くなぞるたびに、ボロボロと壁の土が崩れ落ちた。




(僕が学校へ行くのをやめたことが、これから先の人生の何もかもに悪影響を与えて、全ぶが狂いはじめるっていうのなら、すごく怖い・・・




すごく怖くて、今すぐにでも死んでしまいたい。




だけど、どんだけ僕の未来が狂っても、お先が真っ暗でも、10年後全てを投げ出すことができるなら、そんなに怖くない・・・)

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