三章:男の言い分

第6話

「冷静だね、おじさん。ふつー・・こういう時は、止めるよ。」




「・・・だろうな。」




「なんで止めないの?」




「・・・だって、本気なんだろ?」




 妙にシビアな話題にも関わらず、しれっと言ってのける男。男との会話の数に比例して、少年の顔に血色がもどりはじめた。




張り詰めたオーラがゆるみ、次第に現実に引き戻されはじめたのだ。




「それは、そうだけど・・・・」




「そうだろうよ。なんだか昔の俺を見ているようだ。若い頃、そんな風に俺もビルのフェンスをまたごうとしたっけな?って思ってさ。」




「おじさんも!」




 男の言葉に突如、瞳を輝かせ、フェンスをするすると降りてくる少年。




「まぁね、けど、おじさんはよくないな、俺はまだ、36歳だし。」

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