第2話

白く粉を吹いた唇をしめらせるように、赤い舌先で何度もなめつける。




「思いの他、高いな・・・・」




 かすれた声で少年は一人つぶやいた。フェンスに指を立て、何度もひっぱり強度を確かめてみる。




小さく乾いたフェンスのすり音が辺り一帯に響いた。少年は意を決っし、フェンスに右足をかける。




フェンスの網目は思いのほか小さく、まっすぐに足をひっかけられない。少年が、ちょっと斜めに足の甲をひねると、丁度いい具合に足先がフェンスの穴に納まった。




なぜ、人は飛び降りる時、靴をそろえて置くんだろう?などと、フトどうでもよいことが少年の脳裏をよぎる。




だが、そんな思考はすぐにかき消された。今度は、右手でフェンスをつかみ、左足をかけてみる。ゆっくりと、そして着実にフェンスをよじ登る少年。

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