第21話

野獣男の目にじわじわと涙があふれてくる。




「ジェミー…オメェは綺麗だ……オラなんかより、ずっとずっと綺麗だ。心も瞳も……」




そう男は言いながらジェミーの頬にふれる。




「あの頃のまんまだ。澄んでらぁ。オメェは綺麗だ…ぴっかぴかだど。ぴかいちにべっぴんなオラの妻だ。」




「…バカっ。」




嬉しそうに笑うジェミーの目にも涙がにじんでいる。




「ウォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ……」




突如、辺りを揺るがすほどの雄叫びをあげ、とめどなく涙を流し始める野獣。部屋中のガラスというガラスがびりびりと震動をしはじめる。




「泣かないでおくれよ、あんた。」




困ったように笑うジェミー。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る