第10話

ここは、取調室。トッド警部の目の前に座らされ、事情徴収を受けている。これまでずっと何かを考え込むように黙りこくっていた男が、突然、堰を切ったようにしゃべり始めた。




「オラは…オラは本当に幸せだった…幸せだったんだ。綺麗なジェミーを毎日眺められて、村一番のべっぴんでくるくるよく働くジェミーを嫁にもらえて。毎日にこやかにオラ達に接してくれるジェミーの笑顔を見てると、心が洗われるようだった…毎日幸せだった。」




ココまで一気に話しきった男の肩が次第にふるえてくる。




「だけど、ジェミー…アイツはオラの前で幸せそうに笑っておきながら! やっぱり、醜いオラが嫌だったんだ!! 周りに怪物とおそれられてるオラが嫌だったんだ。それで、オラの元から逃げ出したんだ…男と逃げ出したんだ…!!」




そこまで言い切ると、男は胸ポケットからしわくちゃの紙を取り出して、警部の目の前に差し出した。




「これを見ろ! あの馬鹿アマの残した書き置きだ。こんな一通の手紙と、ガキ共を残してアイツは消えた。」




トッド警部は手渡されたメモを声を上げて読む。





『家を出ます。もう一緒に暮らせないのです。探さないで…ジェミー』

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