第9話
「坊主、今日の参観日はどうだった? うちのかぁちゃんより、べっぴんなのはいたか?」
息子の脇腹をつつきながら訪ねる男。
「うんにゃ、かぁちゃんが一番綺麗だった。」
目の前の皿の、ポテトサラダをほおばりながら、にかっと笑う息子。
「そうだろ、そうだろ。かぁちゃんは、とーちゃんが、人生で唯一勝ち取った宝物だからな。」
そう言いながら、嬉しそうに我が子の背中をぽんぽんとたたく男。そんな親子の姿をほほえみながら見つめるジェミー。
*****
「あんたぁ! ここにあったお金はどうしたんだい。今月の生活費を一切合切、かっぱらちゃって、次の給料日までどうやって食ってくつもりだい!!」
木べらを片手に鬼のような形相で家の前に仁王立ちしているジェミー。
「ジェミー。これ……ベベだ。街に行ったときに、偶然見かけて、オメェが喜ぶと思って。折角べっぴんに生まれたオメェだ。いいべべ着て、たまにはおしゃれもせんと。」
「バカだね…もう、ほんとにもう。こんなもん買ってきて。」
しゅんとした、面もちでジェミーに包み紙を押しつける男。どうしようもない夫に、怒りながらも、嬉しそうにドレスを当て、姿見を眺めるジェミー。
可愛いジェミー。
愛しいジェミー。自慢のジェミー。
くるくるくるくるよく働いて、
笑顔がキラキラキラキラ。
オラの唯一の宝物。
ジェミー…ジェミー、ジェミー…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます