三章:美しい日々

第8話

「ウチのかぁちゃんは、べっぴんだからな。良かったなぁ、坊主、綺麗なかぁちゃんで嬉しいだろう?」




我が子の頭をくしゃくしゃかき回す野獣男。




「うん♪」


強面だが、目尻が優しく下がった父の顔を嬉しそうに見上げる子供。




「もう、あんたったら、やだよ。2人も子供を産んで、顔だってシミだらけだし。髪だってぼさぼさだし。」




そう言いながら、シルクのような光沢を帯びたブロンズ色の髪を手櫛でなでるジェミー。姿は貧しくとも、その容貌の美しさは際だっている。




大きな草食動物の様な黒目を帯びた瞳。たっぷり生えそろった、ふさふさの長いまつげ。鼻は程良い小ささで形も整っており、クチビルはほんのり綺麗な桜色を帯びている。そんな美しいジェミーの顔を嬉しそうに見上げる野獣。




「いんや、お前は村一番のべっぴんだ。」




「「なー♪」」




父と子が示し合わせたように笑い手を取る。そうして、一緒に家中をステップを踏みながら踊り始める。




「「かぁちゃんは、綺麗♪


かぁちゃんは、べっぴん♪


かぁちゃんは、綺麗♪


かぁちゃんは、べっぴん♪」」




「も~う、やだよ~この子は、あんたまで一緒になって」




そう言いつつ、嬉しそうなジェミーの顔。

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