二章:ケビン=フォード

第6話

「やぁ、僕はケビンだ。君の名前は?」




「…ケリー。」




明るい声のケビンと対照的に、低い声のトーンでつぶやくようにそう名乗った少年の表情は暗く、無表情で診察室の床ばかりを眺めている。




そんな少年の様子を見て、ケビンもちょっと表情が曇ったが、ありったけの笑顔で少年に向かって声を掛けた。




「ケリー、君はキャンディは好きかい?」




「別に…。」




「そうかな? 君は、今からキャンディが好きになるよ。」




ケビンがそう言うと、コロンと床にキャンディが一つ落ちて来た。




少年が床のうえにイキナリ転がり落ちてきた、キャンディに目を奪われていると、また、二~三個音を立ててキャンディが転がり落ちてくる。




少年がたまらなくなって、ケビンの方を見上げると、イタズラっぽく笑ったケビンがこう言った。




「やっと、僕の方を向いてくれたね。いいかい、僕の手をよーく見てて、今から君はキャンディが大好きになるから。」

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