第5話

「ところで、子供を人質に取るとは、考えましたな。あんな野獣のような男でも、我が子となると可愛いんでしょうなぁ…。」




無傷で無事に人質を助けることが出来たのがよほど嬉しかったのか、トッド警部はいつになく陽気である。それに反し、ケビンはやや暗い面もちである。眉をひそめ何か考えこむ様につぶやいた。




「それより、僕は子供の心の傷の方が気になります。母親が男と逃げ、そうして、父親が強盗をしている現場に居合わせていたのですから。そしてだめ押しの逮捕劇。僕も今回はちょっと強引な手を使いましたしね。赤ん坊の方は状況がわからないでしょうから、まだ、イイとして…もう一人の十歳前後の少年。一番多感な年頃です。悪い影響を落とさなければいいのですが…」




警部は目を細めると、ケビンの肩をたたいた。




「先生。何でしたら、会ってみますか? その強盗の子供に。」




「いいんですか?」




ちょっと驚いた様に、トッド警部の方を見返すケビン。




「いいもなにも、私も子供に関しては気になります。ただ、我々の管轄をオーバーしてますからな。アフターケアを先生の所でしていただければ、そりゃあ礼こそ言やすれ、断る理由なんてありませんよ。」




「ゼヒ! そうさせて下さい!」




そう言うと、ケビンは目を輝かせた。

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