31.これって!

第31話

娘のごもっともな忠告に、慌てて両手を手放す洋次。そのちょっとおどけたジェスチャーに、思わず苦笑する真奈美。そうして、口を開く。




「分かってたんだ、オヤジはエンコーなんてしてない。他の中年オヤジどもとは違った。今回会ったのだって…分かってたんだ」




噴水から上がり、スカートのすそ端を雑巾のように絞り、水をしたたらせる真奈美。公園の地面に染み渡る水。




洋次も噴水から這い出した。すっかり水を吸った靴下と革靴が歩くたびにゴポゴポと鈍い音を立てる。ペッタリと額に張り付いた髪の毛を片手でかき上げながら洋次。




「オマエは援交してたけどな。父さん、ちょっとショックだったぞ」




「だから、お茶だけだっつってるじゃん!」




洋次の言葉にカッとなり反論するも、すぐにうつむいてしまう真奈美。




「ごめんなさい。反省してます。二度としません」




真奈美の言葉に、息をついてかすかに笑う洋次。そうして口を開く。




「もう、家に帰るか…」




びしょぬれのまま、洋次はカバンを拾う。




「うん」




真奈美もカバンを両腕でかかえ、うなずく。




「風邪をひくし、母さんも心配してるし」




「うん」

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