30.どんな罵声でも
第30話
罵声ですらいとおしい。
洋次に真正面からぶつかってくる、これが自身の子であり、娘なのだ。ますます、両腕に力を込め我が子を抱擁する洋次。次第に弱まる真奈美の罵声。
徐々にと悪態が聞こえづらくなって来たかと思うと、ついに、真奈美は黙りこくってしまった。
顔をうつむけ、おとなしく洋次の腕の中でたたずんでいる。頭からつま先、制服、背広、下着、果ては靴の奥底の中敷きにまで2人の隅々に染み入る水。
噴水の脇をまばらに通る人々。
若いカップル、犬の散歩に立ち寄った娘、買い物帰りの主婦、老人たちが怪訝そうに噴水の中の二人を見つめる。周囲のひそひそ声を気にしてか、やがて、前髪から水をしたたらせながら口を開く娘。
「あのさ、オヤジ…あんま、このままで居ない方が…。周囲には親子だって分からないんだからさ、女子高生襲ってる、単なるおっさんサラリーマンにしか見えないかも」
「おっと、そいつはやばいや!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます