29.フイの出来事の果て

フイの出来事に、よける間もなく、背後の噴水の水溜りに突き落とされる洋次。

と同時に真奈美も噴水の中に転げ落ち、二人はびしょぬれとなってしまった。水の中で洋次が体を起こそうとすると、間髪おかず真奈美がつかみかかってくる。

「このやろ！　このやろぉ！　ムカつくんだよ、このくそオヤジ！！」

馬乗りで何度も何度も殴りかかってくる真奈美。

小娘の力ゆえに、さほど痛くも痒くもないのは分かってる。けれど、洋次の心に娘のこぶしの一つ一つが痛いほどにしみ込んだ。

（ああ、私はこんな娘をほったらかしてたのか。仕事にかまけ、家庭内の揉め事をスルーし…目の前に揉め事を生み出す、思春期の娘をスルーし……家族を空気のように扱っていたのは、むしろ、私の方だったのかもしれない）

そう思うと、途端に娘がいとおしくなってきた。

洋次は力を込め、濡れねずみのまま娘を抱きしめる。突然の出来事に、驚いた娘が悲鳴めいた声をあげる。

「キモイぞ、このくそオヤジ！　このど変態！　セクハラ親父！」

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