18.娘よ

第18話

声が少し上ずってしまったかもしれない。大の大人としては、ちょっと情けなくもあるが、久しぶりの娘との会話。洋次の胸にこみ上げる何かがあった。思わず嬉しくなって、学校に出かけようとする真奈美に向かい声を掛ける。




「真奈美、背中に糸くずついてるぞ」




食卓から立ち上がる洋次。




「え?」




「取ってやろう」




そう言って、洋次は腰軽く動くと、驚いて振り向いた真奈美の背中の糸くずを、笑顔で摘み上げる。




「あ、ありがとう…」




今度は真奈美が戸惑う番だ。ちょっとバツが悪そうに礼を言う。こんな当たり前の会話、当たり前のコミュニケーション、これがなかった。




嬉しくなった洋次は、ゆれる通勤電車の中で携帯を取り出し、早速メールを打ち始めた。

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