16.二人のキモチ

第16話

『そんなことはないさ、娘を心配しない父親なんていやしないさ。僕と同じように口には出さないだけで、しっかりキミのことを考えているだろうと思うよ』




奇麗事かもしれない、メールを打つ半ばで、ふと洋次の脳裏をよぎる。実際、娘のああした態度を目の当たりにして、それでもそんな風に思えるのか? そう、洋次は自問自答する。




洋次のメールを打つ手が止まる。




だが、頭を振ると再びメールを打ち込み始めた。ゼロではないのだ……確かに存在する。父としての感情が、確かに洋次の心の片隅にはあるし、メールを打つことにより、改めて親父としての娘への愛情を心内で再確認していた。




『……』




早速返信が返ってきたかと思ったら、ナナのメールには、文字らしい文字がなかった。しかし、ナナとの度重なるコミュニケーションで、だいぶメールのコツがつかめてきた洋次には、その並べられた点の意味を悟るだけの察しのよさができつつあった。




『なんだい、その沈黙』




そう返信する。

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