13.ナナと娘
第13話
自宅に戻ると、玄関を開ける父親を無視し、素通りでリビングに入る実の娘。扉のすげなく閉まる音がぐっと二人の距離を感じさせる。
「おかえり」のあいさつなどあろうハズもない。こんなことがもう何年も続いている。だが、娘にそっぽを向かれても、いつものように暗い気分には陥らなかった。ナナがいるからだ。
携帯のランプが光る。早速、ナナからメールが来たようだ。トイレに入り込み、メールを開いてみると、思いのほか長いスクロール。今回は随分と長文のようだ。
メールのタイトル。
『ザンゲします。』
続くナナのメール。
『前に、エンコーがどうとかってヨウさん言ってたよね? あの時は、つい話をそらして、ごまかしちゃったけど。ザンゲします。エンコーはしてました。
もう、過去形だけど。それに、売りはしてないけど。お茶とか、ご飯とか、時々食べさせて貰ったり』
今更ながらの、ナナのこんな返事。打ち解けてきただけにショックだった。その先を見続けるのが怖いような、しかし先を読み進めずにはおれぬ洋次。スクロールする。いつになく顔文字のない文字ばかりのメール。そこに洋次はナナのザンゲの気持ちをかすかに感じ取る。
続くメール。
『でも、一度あぶない目に遭ってから、それもやらなくなりマシタ。ヤツラ、あたしたち女子高生の体目当てだからさ。お茶だけなんてウソばっかり!
バカみたいだけど、怖い目に遭って初めて気づきました。やっぱ、自分は大切にしないと…自分を棚上げして言うのもあれだけど、よかった、ヨウさんがイイ中年男で。(^-^)』
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