12.仲良しじゃない

第12話

内心ドキっとする洋次。しかし、おくびにも出さず、ほぅほぅと部下の言葉にうなずいて見せる。




「僕の娘も年頃に成った時に、課長の娘さんみたいに、仲良くいれたらいいんですが。今からちょっと不安です」




そんな若い父親の言葉に(どこも似たようなもんか)と、内心思いつつも、部下の期待を裏切らまいと、それと悟られぬよう演技する洋次。部下の肩をたたきながら、




「キミの娘さん、今3歳だって? 可愛い盛りだね。大丈夫だよ、育て方次第さ」




などと、うそぶいてしまう。




本日の業務も終わり、携帯の液晶画面を眺めながら自宅へと向かう洋次。ランチタイム、部下に投げかけられた言葉を思い出す。




(娘は娘でも、一体どこの娘さんだか)




まだナナから返信は返ってこない。携帯のランプは暗く沈んだままだ。




(見も知らぬ娘さんと、メール交換してたりしてなぁ…。本当の娘は……)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る