13.嘘

突然、洋次の背中から声が掛かる。液晶画面を覗き込んでくる部下に、見られまいと慌てて携帯を閉じ、背広のポケットの中にしまいこむ洋次。そうして改めて部下を向き直り、一言。

「ああ、娘とメール交換してるんだ」

そうごまかしてしまう。ちょっと興味深げに部下、両手に洋次と同じ定食を抱えている。

「課長がそんなに携帯通だとは思ってもみませんでした」

部下の言葉に、照れたように洋次。

「ごくごく最近だよ。使うようになると、これがナカナカ面白くってね。」

手にしたお盆を洋次の定食の横に置き、すっかり腰をすえ座り込む部下。

「娘さんと、仲がよろしくって羨ましいですね。イマドキの子は、父親を敬わない子が増えているらしいですが」

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