5.なんてこった!
第5話
頭を抱えそうになるのをこらえながらも、必死に平静を装い、娘から顔を背ける洋次。いやぁな汗が背中を伝う。ポケットの中の携帯をぐっとつかむ手の平もじっとりと汗ばんできているみたいだ。
不審そうに見てくる娘の視線を痛いほどに感じ、こそこそと携帯を取り出すと、メールの画面を再び表示する。そうして、洋次は中年にあるまじき、ハイ高速でメールを連打する。
もう一度待ち合わせ場所を変更することも出来たかもしれない。しかし、さすがに無理を感じたのか、洋次は諦めてドタキャンメールを送ることにした。そして、数秒ためらいつつも、危機感にあおられ、すばやく送信。
これで、娘に女子高生とのデートを目撃されずにすむ。そう思うと、大きく胸をなでおろしたものの、反面、洋次はほんのちょっぴり残念な気がした。
所詮、あっさりと出会った二人、これでもう終わりになるだろう。ネットで男女二人がデートにこぎつけるのはなかなか難解だというのに。ひょっとすると、こんな好機はなかったんじゃないか? そう思うと、やはり惜しい。
しかし、背に腹は変えられない。携帯を眺めつつも、自分をちら見して、鼻で笑う娘を見て洋次は自分を納得させる。それに、そもそも小娘に説教をするために、会うんじゃなかったか? と自分を戒める。
ところが、意に反し、またしてもあっさりと、了承のメールが入ってきた。帰宅途中の着信音。期待していなかっただけに、洋次の口元がほころぶ。二人の関係はまだまだ続行ということか。この小娘とは、縁があるらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます