第71話
赤・赤・赤、数多くのギャラリー。以前はそれでも仲間だった連中たちの面々。
(男の癖に弱っちいけど…なんか、初めて心開けるダチ……)
真っ白な景色の中、走馬灯のようによみがえる裕也との思い出。母の悲しむ顔。父の遺影。
(あ~あ、俺の人生はかなかったなぁ…)
やがて瞳をつむる一志。
*****
ついに一枚のメモを拾い出し、半泣きの表情で笑う裕也。
「…一志がバカでよかった…」
裕也の手には一志のメモ。待ち合わせの場所と時間が書き記されている。メモの内容を確認したあと、ズボンの後ろポケットに無造作にねじ込み、今度は廊下に飛び出す。そうして唖然とする静江をよそに、一志の家の電話を断りもなく拝借し、ボタンをプッシュし始める。通話先は110番。受話器に口をつけ、裕也が早口でまくしたてる。
「あの済みません。警察ですか? ●×中央公園でカラーギャングが大暴れしているみたいです。――そう赤いヤツです」
裕也に反し、冷静な口調の警官。
『おい、君の名前は?』
「今すぐ、今すぐ、お願いします。一刻を争うんです!」
警官の質問も無視し、裕也はこちらが言いたいことを一方的に言い放つと電話を切ってしまう。そして再び駆け出す。
「なぁに? 何があったの?」
と背後から静江の声。それもそうだろう、勝手に上がりこんであっという間に出てゆくのだから。しかし裕也は振り返り言う。
「すみません、電話借りました。あとでお話します!」
見るからな言葉足らずだが、今は致し方ない。その一言だけ言い残して、裕也はとっとと靴をはくと、再び自転車に飛び乗った。
「なによー…気になるじゃないのよ!」
とふてくされながら静江。そんな静江を残したまま、裕也は自転車をめいっぱいこぎまくり、メモの現場へと向かう。
「間に合えー、間に合えーーーーーーー!!」
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