第63話

そんな一志の言葉。一志のくったくのない笑顔。あの日一志は何もかもが吹っ切れていた。とびきりの笑顔。裕也の泣き顔に、すれ違いざま驚いた顔で振り返る通行人たち。裕也は手の甲で涙をぬぐいながら、行く当てもなく街中を徘徊する。

(そんなのわかんないよ、わかんねーじゃん! ボコられすぎて、死んじゃったらどうすんだよ…)

そこまで脳裏をよぎり、裕也は泣きじゃくりながら叫ぶ。両手で顔を覆う。

「一志が死んじゃう。一志が死んじゃうよぉ~~~~」

あふれ出る涙を腕でぬぐう。ぬぐってもぬぐってもキリがない。

「やだよ、やだよぉ~~。そんなのやだよぉぉ~~~」

しゃくりあげながら、裕也は自失し遠く景色を見回す。多量の涙のセイか、辺りがにじんでいる。どこにも見当たらぬ赤い服。パァー! 車のクラクションが鳴り響く。車の行き交う雑踏。人々のざわめきの声。思い思いに鳴り響く。

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