第62話
一方、裕也は家を飛び出し、駆け出していた。
(どうして、僕は無理にでも一志にくっついてくって言わなかったんだろ? 一人で行って無事で済むわけないじゃないか。あほだ…僕は…)
そうしてバスに乗り。裕也は以前一志にチームがいつもたむろしていると聞いていた、繁華街の公園付近を探し回ったが、レッドギャングの姿は見当たらなかった。根城を変えているのかもしれない。裕也は無意味だとは分かっていても尋ねずにはおれない。闇雲にすれ違う人を捕まえ、頭を下げ、またすがりつき尋ね続ける。往来する人々はそんな裕也の姿を怪訝そうに見つめる。
「あの、身長は百七十センチくらいで、頭が金髪で、顔は…」
「あの、ピアスつけてて、髪は金髪で…」
「服は多分、あか…赤を着てるんです。それがテーマカラーだから…」
何度尋ねようとも、裕也はことごとく首を横に振られる。ふと裕也の脳裏に一志の笑顔が浮かんできた。
(無理だよ…無理だ、どこに行ったんだよ! 僕は一体どうすれば…)
途端に目頭が熱くなり、裕也は次第に半泣き状態になってくる。涙がこぼれ落ちぬよう必死に鼻をすするも、それでも例の液体はとめどなく鼻腔に流れ落ちてくる。必死に唇をかみしめ、何度も鼻をすする裕也。
(泣きそうだ…だって、折角出来たトモダチなのに。一志が死んじゃったら…)
とうとう涙がこぼれ落ちてしまった。そこからはセキを切ったようにあふれ出る涙。ここは街中だとか、誰かに見られるだとか、そんなことはお構いなしに流れ続ける裕也の涙。
『いくらなんでも殺しやしねーだろう!』
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