第61話

一志の言葉にせせら笑う鷹山。

「ルールはとっくに変わってんだ。一志よぉ、俺らのチームは国内一のギャングを目指してっから。抜けたいヤツをほいほい抜けさせるような、そんなハンパなこたぁ、やれねぇんだよ! なぁ、ぴかいちデカくなるためにはよぉ!」

それでも諭すようにリーダーの風格で、鷹山は優しく目を細めて言う。

「抜けさせてください!」

勢いよく頭を下げる一志に迷いの念は見られない。

思いの他はっきりとした一志の声に、鷹山は一瞬驚いたように目を丸めたが、やがて弾けるように笑い出す。

「こいつ、抜けさせてくれって! くははははは! この俺が事のイキサツだの、チームのテンボーだのを、わざわざ説明してやってんのに! こいつと来たら、ふははははは!」

一志をあごでしゃくり、周囲に向かって賛同を求めるかのごとく、さもおかしげに高笑いする鷹山。しかしそれもつかの間、突如鷹山の眼光がギラつくと、何かが一志の右頬をかすめ切った。高く派手な音を立ててガラスの破片が弾け飛ぶ。透けた赤茶け色の残骸。張り詰めた空気。鷹山が手近な空き瓶をつかみ、キレるにまかせ一志に向かって投げつけたのだ。

一志の右頬に焼けたような痛みが走る。すんでで外れたのは、意図的なのか、はたまた不本意なのか。ただ摩擦で焼けた皮膚がかすかに筋状に変色している。固唾を飲むチームメイトたち。

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