第60話

「真っぴるまから話があるってぇから、何かと思えば…」

あからさまに不愉快そうな鷹山の顔。

一方の一志は、壇上のオブジェある中央公園で、真っ赤なテーマカラーを身にまとった五十名ほどの集団に取り囲まれ、立ち尽くしていた。一志が身にまとっているのは、いつもと違う洗いざらしの真っ黒なTシャツに上着。テーマカラーをあえて外したシャツ。何一つ赤い色を身に纏わないサマ…これはチームを抜けることへの決意表明か? 公園の上座、階段状になった頂上、壇上のオブジェを背に鷹山が腰掛け、一志を見下ろしていた。両脇には参謀を抱え。

そこには確かに階級が存在していた。鷹山が指でタバコを催促する形を作ってみせると、二週間前に入ったばかりの新入りが壇上を駆け上がり、片膝をついてタバコの小箱を差し出す。鷹山が口を開いた。

「入りてーっつったり、抜けてーつったり、なんだぁ? ちっとも腰のおちつかねぇ野郎だな、一志、お前はよぉ!」

差し出されたタバコをくわえ、当然のごとく火をつけさせる鷹山。煙を肺の奥まで溜め込み、目を細め灰色がかった煙としてゆっくりと吐き出す。

新入りはタバコに火がついたのを見届けると、即座に壇上を駆け下り、再び定位置に戻る。

「俺ぁ、てめぇみたいなヤツがでぇっきれぇなんだよ! ケンカ一つまともにできねぇ、女の腐ったような野郎がよ!」

そう吐き捨てるように言うと、鷹山は一志に睨みをきかせる。サイドの参謀は一瞬目をしばたかせたが、あくまでも表情は変えず、両腕を背後に回し、全身直立不動のままだ。鷹山の威圧的な空気に飲まれそうになるなるも、腹をキメ言葉を続ける一志。声が震えそうになるのを必死でこらえ、なるたけ鷹山に負けじと、通る声を出そうとする。だが、それでもやはり声は所々震えていたかもしれない。

「ギャングは、抜けたくなったら、いつ抜けてもいいハズでしたよね?」

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