第58話

ここにきて、裕也が初めて口を開く。

「けど、簡単に抜けさせてくれるの?」

不安げな顔だ。

「無理!」

と一志は笑う。

「ずぇってぇーーーーーーーー無理! けど、やっぱ、生きてるとここ一番つって、キバんなきゃいけないとこってあるって思った。でなけりゃ、いつまで経ってもトンネル抜け出せないじゃん!」

すっきりとした一志の顔。その言葉にいたく感心し、一志を見つめる裕也。やがて裕也の視線に気づき、一志がちょっと照れくさそうに頭をかく。

「って、カッコつけて言っちゃったけど、実は日本のカラーギャングってさ、族よか規律が甘いんだよな」

瞳を伏せ一志。

「本場はどうか知んないけどさ。やるこたぶっ飛んでるけど。だからさ、抜けるのも入るのも意外とフリーな感じだったりしてさ。ただウチのリーダー格はかなり小うるさいけど、けど、大体そんな感じ」

そう一志は笑う。身を乗り出して裕也。

「僕もついてこうか?」

裕也の提案に苦笑う一志。

「連れションじゃねーんだし、お前じゃ何のタシにもなんねーって。明日一人でケリつけるよ。チームの連中もまさか殺しゃしねーだろ?」

裕也も笑う。一志は裕也の肩に右腕を伸ばし、明るい笑顔で言う。

「俺が見事チームを抜けられたら、乾杯してくれよ、コンビニで宴会道具買ってきといて。酒とか菓子とか山盛り! お前のおごりで」

「僕のおごりぃ~~?」

「そりゃ、そうだろー!」

やがて一志のごり押しで商談は成立し、完全に吹っ切れた気持ちよさげな笑顔で、一志は手を振り帰って行った。

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