1-9.友情の続き

第56話

「けど…お前が無理やりにでも止めてくれてよかった。俺またバカやるところだった。俺ってほんとバカだよなー…おふくろにまた迷惑かけるところだった…実はちょっと感謝してる。頭かなり痛てーけど…」

そう言うと、裕也に向かいくしゃっと笑う一志。

ここは裕也の部屋。事件直後、病院へ立ち寄り、そうして治療を終えた一志と二人が連れ立って帰ってきたのだ。

「ズボンまで下ろして、俺かっこわりー…」

自嘲気味の一志。裕也には、一志に掛けるべき言葉が見当たらない。

「前々から思ってたけど、服着たまま下半身だけむき出してんのって、ぜんぜんサマになんねーよなぁ! レイプほど男がサマんなんねーのってねーよな! しかも顔面は覆面してやんの! ぶはははは! ダサすぎ!」

そう言って大声ではしゃいで笑うと、一志は途端に無言になる。そうしてすっかりうつむいてしまった。しばしの沈黙の後、口を開く一志。力無くうなだれている。

「俺、ツラいい方じゃん? 鷹山さん…チームの頭は、強面だから、そのまま行ったら女逃げるし。だから、いつもとっつきやすそうな俺が女をひっかけに行かされてた」

前髪で表情を隠したままの一志が、言葉を続ける。

「ギャングってさ、ギャルにめちゃめちゃモテんの。レッドギャングって言っただけで、すーぐ集まるってぇか。俺が女集めたら鷹山さん機嫌よくってさ、俺もよくご相伴にあずかってたっけか?」

一志の肩がゆれる。

「けど俺、服の下ボコボコじゃん? アザだらけだしさ、女の前でちょっとカッコわりぃさ、脱げねーの。だから公衆便所とかで、よく服着たまんまやってたなぁ…モノだけ出して」

唖然とし、どぎまぎしている裕也を尻目に、言葉を続ける一志。裕也にはちょっと刺激がすぎたみたいだ。

「廃屋・茂み・寂れたビルの階段の踊り場とか、イロイロ…」

裕也を振り返り、力なく笑う一志。

「ほら、ラブホ行くと金かかるし、展開的に服、脱がなきゃなんねーじゃん? で、結局、モロモロを何気に回避するため、あおかん専門…はは! ワイルドな一志さんつって。女は意外と燃えんだけどね…出るもんは出んし、キモチはいいんだけど、終わると…」

そこまで言い、突如一志の言葉がぷつり途切れる。うつむき、しばしの間。

「って、なんだかシンクロしますよ。あはははは!」

そう高笑うと、一志は大きくため息をついた。

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