第55話
そこまで鼻声でうめくように言うと、ぐっしょりとぬれた両頬のまま、一志を見上げる。そして問う。
「…軽蔑する?」
「女にイジめられたなんて、変だと思ったんだ…」
と一志、放心した顔でつぶやく。
「ごめん…」
裕也はうつむく。肩をゆらし苦笑う一志。
「だよなー…いくらお前が弱っちくても、さすがに女にイジめられるワケないよな?」
「ごめん」
裕也はただただ謝罪を繰り返すだけで、そんな裕也の肩をゆすり慰める一志。そして口を開く。
「わかった、わかったけど、俺。お前に頭かち割られてんだけど…頭いってーーーー!!!」
そう痛みに頭を抑え大騒ぎする。しかし一志の騒ぐ割に妙に明るい言葉に、次第に二人は現実味を取り戻してゆく。
「だ、大丈夫!」
「大丈夫じゃねーよ、ってぇーーーーー」
「ごめん」
謝りながら、再び泣きそうになる裕也。
「謝るよか、病院連れてってくれよ。泣きてぇのは、こっちだよ」
そう言う割りに、さほど裕也を責めていない風の一志。渋い顔でやれやれといった表情だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます