第55話

そこまで鼻声でうめくように言うと、ぐっしょりとぬれた両頬のまま、一志を見上げる。そして問う。

「…軽蔑する?」

「女にイジめられたなんて、変だと思ったんだ…」

と一志、放心した顔でつぶやく。

「ごめん…」

裕也はうつむく。肩をゆらし苦笑う一志。

「だよなー…いくらお前が弱っちくても、さすがに女にイジめられるワケないよな?」

「ごめん」

裕也はただただ謝罪を繰り返すだけで、そんな裕也の肩をゆすり慰める一志。そして口を開く。

「わかった、わかったけど、俺。お前に頭かち割られてんだけど…頭いってーーーー!!!」

そう痛みに頭を抑え大騒ぎする。しかし一志の騒ぐ割に妙に明るい言葉に、次第に二人は現実味を取り戻してゆく。

「だ、大丈夫!」

「大丈夫じゃねーよ、ってぇーーーーー」

「ごめん」

謝りながら、再び泣きそうになる裕也。

「謝るよか、病院連れてってくれよ。泣きてぇのは、こっちだよ」

そう言う割りに、さほど裕也を責めていない風の一志。渋い顔でやれやれといった表情だ。

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