第49話

菅原奈央、それが二人のターゲットだ。彼女の全てをくまなく調べつくした。そうして日々の帰宅の時間も。週の内、唯一、奈央が一人で遅く帰宅する水曜日。それが報復の決行日に決まった。一人、人けのない夜道を急ぎ足で帰宅する奈央。ブレザーの制服姿のままで学生カバンと塾のカバンを手にしている。そこに突如立ちはだかる二人の少年。

「ハローお嬢さん! 初めまして!」

黒いバンダナで口元を隠し、サングラス、そうしてキャップで顔面を覆い隠した二人の少年。その内の一人、声の主である一志が奈央に向かいひらひらと手をふる。もう片方の手には大きなサバイバルナイフを手にして。そのある種異様な出で立ちに不穏なものを感じ、身構える奈央。小さく悲鳴をあげ、即座に駆け出し逃げ出そうとする。そこをすかさず一志が回り込み、奈央の行く手を阻む。

「おっと、どこ行こうとしてんのかなー?」

そうおちゃらけて言うやいなや、一志は奈央の右腕をひねり上げる。そして背中に回しがっちりと固定する。やがてもう片方の手でナイフを背中に押し当て、耳元でささやく。奈央の恐怖心をあおるべく、わざとゆったりとした一志の口調。

「こっちはナイフ持ってんだ。感じるだろ? 背中に。デカいのでぷっすり刺されたくなけりゃ、ガタガタ騒ぐんじゃねぇ…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る