第48話

二人は一通りのグッズを買いそろえ、一志の自宅へと帰宅した。静江は仕事に出かけている。そうしてがらり人影の無い一志の部屋の中で、二人は袋の中の購入物を絨毯の上に次々展開した。早速、自らの購入分の値段シールをはがし、身にまとい始める一志。そうしてキャップをかぶり、サングラスをはめ、口元を三角に折ったバンダナで覆った一志が、はしゃいだように言う。

「これでピストルでも片手に持ったら、まさに安手映画の銀行強盗みたいだけどな。手を挙げろ! 死にたくなけりゃ金を出せ! バン!」

サングラスの奥の片目をつむり、裕也に向かって右手でピストルを撃つ素振りをする。

面白おかしく話す一志を尻目に、裕也は心から笑えなかった。先ほど購入してきたばかりの、帽子の端を握ったり放したりと、両手でもてあましている。またサングラスを袋に残し、バンダナも買いたてのまま、シールを残し、キレイに折りたたまれている。

一方、別の紙袋からナイフを取り出し眺める一志。大きなサバイバルナイフだ。刃先に親指を寄せ軽く触れるが、すぐさまビビったように跳ね返す。

「ちょーこえ! これって、マジちびりそうなまでに迫力あるナイフだと思わね? 俺の発掘センスって抜群?」

そうして賛同を求め一志は笑う。

その笑顔に裕也は半ば困ったような、とまどったような奇妙な笑みを返す。裕也はその実、一志も心の奥底からはしゃいでいないことをうすうす感づいている。一志はいつだって愉快そうにはしゃいでいる。だけどそれが必ずしも本心であるとは限らないことを、裕也は長い付き合いでとっくに知っていた。

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