第44話
冷蔵庫のペットボトルのジュースとグラスを二つ。そうして戸棚からこっそり見つけてきたいくつかのスナック菓子やツマミをお盆に載せ、再び部屋に現れる裕也。
裕也が戻ってきた頃には、一志はすっかりと着替えを終えていた。そして脇には、スーパーのビニールの空き袋に丸めて突っ込まれた一志の洋服。無論、赤いシャツも突っ込んであり、白く薄いビニールから薄紅色に透けて見えている。そうしてその袋はまるでチームとの決別を表しているかのように、部屋の片隅に転がっている。
「あーけど、なんかすっきりしちゃった。久々に清々しい気分ってヤツ? 酒ねーけど、とりあえずジュースで乾杯しとく?」
と片腕で伸びをしながら一志。そうして裕也に乾杯のグラスを持ちかける。
「ごめん」
どこか生真面目な裕也は、冷蔵庫内のビールやらチューハイ、戸棚の焼酎・日本酒などを全て素通りして、健全なる十台の打ち上げグッズを取り揃えてきたのだ。かくして二人の前に並ぶのは、コーラとスポーツドリンクのペットボトルが二本。
「いいって、だってご相伴に預かってるご身分ですから。酒なくっても、今日はすっげー気分イイ!」
そう言いながら、ジュースでするめを食べる一志。再びいつもの一志が戻ってきたのを見て、裕也はほっと安堵する。先ほどまでの土下座はどこへやら、一志はすっかり足をくずし、くつろいだ姿勢でジュースを注ぐ。そうしてこんなことを言い出した。
「なんかさー、俺ばっか助けてもらうのもナンだし、俺もお前の報復、手伝ってやるよ。だって俺たちダチだもんな」
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