第40話
一志は半ば自嘲気味に肩を揺らす。そして無言の裕也を目の前にして、うつむいたままポツリポツリと語り始めた。
「裕也も知ってるだろうけど、俺ん家、親父がかなり早くに死んで、母子家庭でさー…」
と苦しそうに一志。眉をひそめながらも続きを語る。
「ハハオヤとか水商売してて、で、同級生の親とかが言うらしんだよな。『あんな子と遊んじゃいけません。母親が水商売だなんてロクなもんじゃない』ってさ、あはは! だから俺、昔っからあんま友達とかできなくって」
言葉を無くす裕也。友達が出来ない理由は様々なのだ。
「けど別に俺はおふくろとか恨んでないし。だっておふくろが俺のために働いてんの、実際見てるわけだし…」
そこまで言うと、しばし黙りこくる一志。そうして力なく笑いながら裕也を見る。悲しそうに眉をひそめ笑う。
「だけどトモダチいねーのって、やっぱさみしーじゃん。そんな時、唯一俺に話しかけてきてくれたのが、レッドギャングのリーダーの鷹山って奴で。ってめちゃめちゃベタだけど」
そう言うと、一志はズタボロの真っ赤なシャツをわしづかみ、裕也に見せる。
「そいでもって、こいつがテーマカラーの赤。まるでバカみたいだけどさ、みんなで色をそろえんの。けど俺は嬉しかったぁ…。ダチって感じでさ…仲間って感じでさぁ…」
いつもいつも赤い洋服ばかりを着ていた一志に、そんな裏事情があっただなんて思いもよらなかった。ただ赤が好きなんだろう、好きだからずっと着ているくらいしか思っていなかった裕也。
初めて知る新事実に驚きを隠せない裕也。カラーギャングというのは、どこかで聞いたことがある。族に変わる新たな不良グループの形態で。その特徴は各チームでテーマとなる色を決め、シャツやバンダナなど身につけるものの一部に必ずその色を組み込むことで、仲間意識を高める点だ。またそれは他のチームへのけん制でもあったりする。つまりは服のどこかに赤い色を見つけると「こいつはレッドギャングだから、敵だ、味方だ」といった具合に。色は赤だけでなく、ピンクだとか、シルバーだとか、白だとか様々だ。
またこの不良グループは日本古来のものではなく、その大元はアメリカ大陸から渡ってきたもので。元々スラム街の少年たちが、日々の生活の糧を手に入れるため徒党を組み、強奪・強盗・縄張り争いなどを行っていたのが起源である。本場では銃による殺人などもちょくちょく行う凶悪な集団だ。しかし日本では、さすがにそこまで凶暴であるという話は聞かない。
「で、チームに入ったんだけど。けど最初は優しかったんだけど、ひょんなことで、鷹山をムカつかせちゃったっていうか…」
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