第39話

一志の言葉にやがて諦めたのか、裕也はその場に座り込む。そうして一志を見、しかし正視しきれず目を伏せ、再び一志をチラ見する。二人の間に気まずい沈黙が流れる。しばしの時が過ぎ。突如、舌を打ち鳴らし、大きくため息をついてみせる一志。やがて重い口を開いた。

「あのさ…お前さぁ…不登校の原因、うつ病の原因ってイジメだよな?」

とうつむきながら一志。

「…うん…」

どう答えてよいか分からず、ただ合図地を打つ裕也。続く一志の言葉。

「だったらさぁ…俺の、キモチわかんよな?」

なんとなく薄らぼんやりと見えてくる。一志の現状、そして置かれた立場。出会いたての頃、裕也に対し『なんか似てっから』と言っていた一志。あの頃、裕也には一志との共通点が何一つ見えなかった。しかし今、目の前に展開される様を見せ付けられ、薄らぼんやりと見えてくる。漫然と一志を見つめる裕也の目の前で、やおら上着を脱ぎ始める一志。

赤いシャツを脱ぎ終えた一志の上半身。そこには痛ましいまでの、青アザの数々。初めて見せられた一志のアザ、治りかけの薄いアザから、今日出来たばかりの痛々しいアザまである。

「こんな感じ…デス…」

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