1-7.シンクロ
第38話
深夜、裕也がベッドの上で漫画を読んでいると、部屋の窓ガラスにこつんと音がする。一瞬身を起こすものの、やはり気のせいかと思い漫画を読み始めると。再びこつんと何かが当たる音がする。裕也は窓辺に寄り、カーテンの隙間から外を覗き見る。
すると、窓のすぐ真下の道路に両手を振る一志の姿を見た。見るも無残なまでに泥だらけの服。その一志の様相にただならぬものを感じ、裕也は慌てて玄関先に出る。無論あまり大きな物音を立てぬようにして。そうして自らの部屋へと一志を引き入れることにする。一志は服についた泥が廊下に落ちることを気にしながら、スニーカーを片手に裕也に誘われ部屋へと向かう。
部屋にたどりつくと、すぐさま裕也が一志の着替えにと、自らの洗い立てのシャツとズボンを用意した。しかしそれに一向に手をつけようとはせぬ一志。手にした衣服を脇に置き、裕也。
「一志…なにがあったの?」
裕也の言葉に
「はは、ヤラれちった」
とバツが悪そうに一志が笑う。だが裕也は到底笑えない。
「ヤラれちったって…にしたってこれ」
一志の首筋の火傷を見つけ、裕也はますます青ざめる。
「僕、薬とってくる!」
部屋から飛び出そうとする裕也の腕をつかみ、引き戻す一志。
「いいから、座れよ…」
再び一志の前に座らさせられる裕也。しかし居ても立っても居られない様子で、再び立ち上がろうとする。
「じゃ、せめてお茶を…」
麦茶がなんになるでもないが、少しでも一志の足しにならないかと裕也は思う。しかしそんな裕也に
「いいから!」
と一志が渇を入れる。
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