第36話
地べたで腰を折り、腹を両腕で必死で抱え込む一志。痛みに眉間にしわ寄せ。
「何度言っても直らねぇなぁ、その性根は。いい加減耳にタコができたぜ」
鷹山は下あごをひねると、かったるそうに耳の穴を浅黒いひとさし指で、ほじりながら言う。
「だから! みんなで」
一志は地べたから半身を起こし、鷹山を見上げながら必死に訴えようとする。
「だまれっ!!!」
一志に最後までしゃべらせず、鷹山が切り捨てる。有無を言わせぬ鷹山の怒号。やがて、鷹山は一志の目線にまでしゃがみ込むと、一志の耳元でささやくように言う。
「いいか、おらぁ、ガキんころから、欲しいものは何でも力づくで奪ってきた」
鷹山のしゃがれたドス声。次の瞬間鷹山は叫び散らす。
「なんでもだ!」
一志の鼓膜が張り裂けそうなほどの鷹山の響きと共にわしづかまれる一志の髪。むりやり鷹山にのけぞらされ、痛みで引きつる一志の顔。
恐怖で呼吸が荒くなる。鷹山はそれを見て余裕の笑みで、恐怖をあおるようわざと優しくだけど、ねじ込むように一志にささやく。顔を寄せ、ゆっくりと。
「そうして、いつだってオレが一番だ。これだけは譲れねぇ! シマはデカくする。まずはギャング内でのトップだ。てめぇは、その足を引っ張るってぇのか?」
「そ!そんな」
口答えをする一志の髪をわしづかんだ指に鷹山が更なる力を入れ、思わず痛みで、うめく一志。
「そんなつもりはねぇってか? つもりはなくってもなぁ、てめぇ一人がくそ舐めきった園児精神持ってるせいで、チームの調和が乱れんだよ。いい加減学べ。この世は弱肉強食だ。シマはデカくする」
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