第35話

夕刻、公園で赤の軍団に取り囲まれている一志。相変わらずドハデな赤いシャツを身にまとっている。そうして一志以外の面々も、バンダナ・シャツ・上着・インナー・キャップ・スニーカーなど、どこかしかに赤い刺し色が入っている。その内の最年長と思われる強面の男が、両膝を地面につけ、へたり込んでいる一志を見下ろし、吐き捨てるように言った。男は鷹山と言う。

「仲良くだぁ? それでシマがデカくなんのか?」

鷹山の言葉に立ちすくむ一志。

「あぁ? シマがデカくなんのかって聞いてんだ!」

鷹山の唸るようなどすのきいた声に圧倒されそうになりながらも、一志は言う。

「もう十分じゃないっすか。これ以上、大きくする必要なんてないっすよ。仲間がいて、女がいて。みんなでつるんでだべって楽しい、それでいいじゃないっすか」

「それでみんなでお手手つないでらんらんらんか」

鷹山がうつむき笑う。鷹山の笑顔の意図を勘違いした一志が、必死に鷹山に訴えだす。両手を広げ。

「オレはそれでかまわないと思います。抗争なんて全然必要ないっすよ。争う必要なんてない。オレはチームのみんなと、仲間と、仲良く楽しく暮らしたい。他のチームとだってよくよく話し合えば、きっと共存できる。みんなで楽しく暮らせばいい。女が欲しければ、オレがチームみんなの分も、数だけ全部つれてきますよ、町中さらって」

一志がそこまで言ったところで鷹山のこぶしが一志の溝ウチに飛ぶ。腹をかかえ、そのまま崩れ落ちる一志。

「園児のお遊戯じゃねーんだ!」

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