第34話
二人がすっかり話し込んでいると、突如、開くあかずのふすま。そうしてその奥から、ドハデにカーラーをまきつけたパジャマ姿の女が出てきた。両眉ともなく唇の色もくすんでおり、肌に多少あばたが目立っている。起きぬけなのか、だらしなく着崩れたパジャマの衿口。
「おはよぉ~ふあぁぁぁ」
と女は大あくびをし首をかく。若そうに見えるが一志の母親・静江だ。年齢は不詳。
「あら? 裕也くん」
「こんにちわ」
静江のすっぴんに遭遇した気まずさから多少バツの悪い顔で挨拶をする裕也。静江はすぐさまきびすを返し、部屋に引き戻る。ぴしゃり閉じられるふすま。一志はことを察してふすま越しに静江に言う。
「もー何度も裕也にすっぴん見られてるんだから、いい加減諦めろよ。年の離れまくった息子のダチなんて射程範囲外だろ?」
ふすまの向こうで服を着替える音やひたすらドライヤー音がするだけで静江からは何の返答も返ってこない。
「ねー、見栄っぱりでまいっちんぐ」
いっこうに戻って来ない静江の様子を見て、一志が苦笑いする。
「ひちちちちち」
ふすまが再度開いて、一志の耳を静江がマニキュアの指で目いっぱいつまみあげる。
「誰が見栄っぱりだって? メイクはお水の命だよ」
そう言って参上した静江は先ほどとは打って変わって、バッチリメイク、バッチリお水ファッションだ。
「さ、私にもおつぎ」
バリキメファッション、女王のよう気取った様子で、静江はちゃぶ台の前に座ると一志をあごで使う。
「へいへい」
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