第31話
めぐみは黙ってうつむいている。一志はそれを静かに見下ろしている。するとフイに口を開くめぐみ。
「…いいよ」
一志の服のすそを小さくつかみ、めぐみがつぶやく。とまどった風の一志。
「いや、でも。俺らまだ出会ったばっかだし。てか、これナンパだし、めぐみちゃん女の子だし、そういうことをしちゃ、いけないでしょう?」
瞳をふせたままのめぐみが再びつぶやく。
「いいよ…一志くんなら」
「ふーん…」
うつむくめぐみを見下ろす一志の表情は、アヒルのよう口を尖らせだけど薄ら笑い、どこかコレまでの一志とは、がらり違う小ずるい笑みを浮かべている。思惑通りすべてがことすすみ、まさに満足といった笑み。だが、めぐみが一志を見上げる前に、表情をすぐさま戻し、立ち上がると、今度はかるく純粋さを演出して、めぐみに向かい腕を伸ばす。
「じゃあ、いく?」
一志の促しに、うなづいて手を伸ばすめぐみ。二人は手をつなぎ、連れなって歩き始める。しばし界隈なホテル街を歩きつつも、フイに一志が言う。
「ホテルもいいけどぉ、こっち」
そうしてめぐみの腕を半ば強引に引く一志。そうしてたどり着いた廃屋。あたりに人けはない。
「ここ」
と一志。殺伐とし、薄暗く壊れきった景色に、とまどうめぐみの髪に一志は指を差し込み、首筋と耳たぶを優しくもてあそぶ。
「教えてあげるよ、服脱がないほうが、すげー気持ちいーんだ」
そう言って、一志はめぐみの首筋を舌と唇でむさぼるように食い漁り始める。
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