第25話
ママチャリの脇で背中を丸めて作業に没頭する一志の姿は、誰がどう見ても自転車の窃盗である。それを背後で立ち尽くし、裕也がやや青ざめた顔で見守る。
「いつもこんなことやってるの?」
「必要な時はね」
不安げな裕也に、平然と作業を続ける一志。
「いいのかなぁ?」
と裕也が覗き込む。その声はどこか一志を責めがちだ。それを敏感に察知した一志が冷たく、そしてどこかシニカルに突き放す。
「じゃ、お前は歩いて帰れ。俺はチャリでラクラク帰る」
一志の言葉に
「いやいやいや、歩いて帰れないよ。無理でしょー」
と裕也。これまで歩いてきた道のりを思うと、そしてこれから歩かねばならぬ道のりを思うと、思わずそんな言葉がついて出る。
「だったら、四の五の言わねー」
と振り向かずに一志。不本意ながらも、結局は一志の意向に従うことにしたのだろう、裕也は一志の細かな手作業を息を潜めながら見守る。やがてカギが開き、感嘆のため息をつく。裕也の熱心な視線の中、続いて二台目に取り掛かろうとした一志がやおら手を止め、裕也を振り向いてくる。
「やってみる?」
「いやいやいやややややや!」
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