第24話

「なんで僕は寝てたの?」

「それは俺が聞きたい!」

「ね、バスなしでどうやって帰るの?」

「知るか、歩いてだろ? ほら歩くぞ、こっちだ!」

と一志は、河川敷沿いの細い道路を半ばヤケ気味に歩き始める。それを小走りで追いかける裕也、口を尖らせ叫ぶ。

「通りすがりに寝入るからだよ!」

「まぁな、それを今俺も多少後悔してるところだ」

裕也の言葉をあえて否定せず、先頭を切ってただただ黙々と歩く一志。それについて歩く裕也。二人はため息をつきながら、バスで長らく揺られ来た遠い道のりを歩く。やがて河川敷を抜け、町の通りに近づき、けれど人っ子一人見当たらぬ道。そんな中、まれに二人の脇の車道を軽快に走り、ただ二人を素通りしてゆく車たち。

このまま、家路までとてつもない長距離を延々歩き続けなければならないのか? と裕也がいい加減げんなりとしてきた時だった。

「救世主発見!」

一志が突如叫ぶ。

「え?」

「それも二台も!」

「二台?」

一志の妙な文法に不審顔の裕也。一志は構わず言葉を続ける。

「ほら、あそこチャリ! いい具合に二台あるじゃん!」

一志の指さす方向には、その少し離れた民家の母の自転車であろうママチャリと、息子の自転車であろう段切り替えの自転車がご丁寧にも並べて置いてあった。民家よりはやや離れた場所に置かれているようだが、どうみても人様の所有物である。

早速一志が、ポケットから小さなクリップを取り出し、ひとたび針金のように引き伸ばすと、折り曲げ折り曲げ手早く加工し、しゃがみこんで何やらおっぱじめる。

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