第23話

どれほど時間が過ぎたのか、ずっと空を眺め続けていたつもりが、裕也はいつの間にか、すっかり気持ちよくなって眠りこけてしまっていたようである。一志の激しい揺さぶりに寝ぼけ眼をこする裕也。辺りはすっかりと日が暮れ真っ暗だ。川の向こうに小さな町明かりが見える。

「どっちから来たっけ?」

いまだ睡眠から覚めやらぬ体に鞭打ち、河川敷から道路にまで出て、ぼんやりと左右を見回す裕也。

「寝ぼけてる場合じゃねーぞ。バスがねーんだよ、バスが!」

随分と慌てた様子の一志。その寝癖具合を見る限り、一志も起きぬけのようだ。すっかり頭を抱え込んでいる。

「帰れねーんだよ、俺たち!」

「あ……ってことは、ここで野宿?」

半ばトンチンカンな答えに、あからさまにいやそうな顔をする一志。せせら笑いすら見える。

「それも悪くない、だけど俺はイヤだ!」

一志と会話をするうち、次第に眠気が消し飛んでくる裕也。すると今度は裕也が、一志以上に慌て始めた。

「ね、何で起こしてくれなかったの?」

と一志を一方的に責め始める。

「だから起こしたろ! って」

「もっと早くにってことだよ!」

「俺も寝てたからだよ!」

一志の言葉に途方にくれる裕也。途方にくれついでにあらぬことを口走る。

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