第23話
どれほど時間が過ぎたのか、ずっと空を眺め続けていたつもりが、裕也はいつの間にか、すっかり気持ちよくなって眠りこけてしまっていたようである。一志の激しい揺さぶりに寝ぼけ眼をこする裕也。辺りはすっかりと日が暮れ真っ暗だ。川の向こうに小さな町明かりが見える。
「どっちから来たっけ?」
いまだ睡眠から覚めやらぬ体に鞭打ち、河川敷から道路にまで出て、ぼんやりと左右を見回す裕也。
「寝ぼけてる場合じゃねーぞ。バスがねーんだよ、バスが!」
随分と慌てた様子の一志。その寝癖具合を見る限り、一志も起きぬけのようだ。すっかり頭を抱え込んでいる。
「帰れねーんだよ、俺たち!」
「あ……ってことは、ここで野宿?」
半ばトンチンカンな答えに、あからさまにいやそうな顔をする一志。せせら笑いすら見える。
「それも悪くない、だけど俺はイヤだ!」
一志と会話をするうち、次第に眠気が消し飛んでくる裕也。すると今度は裕也が、一志以上に慌て始めた。
「ね、何で起こしてくれなかったの?」
と一志を一方的に責め始める。
「だから起こしたろ! って」
「もっと早くにってことだよ!」
「俺も寝てたからだよ!」
一志の言葉に途方にくれる裕也。途方にくれついでにあらぬことを口走る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます