第21話

そう言って、一志は草むらに軽くダイブをする。そうしてそのまま仰向けにごろり寝転ぶ。大の字。

「もー寝れればどこでもいいやー!」

一志の心底嬉しそうな顔。そうして再び盛大なあくび。あくびのおかげでちょっとだけ目が覚めた一志が裕也を見上げる。

「お前はなんでそう活き活きしてるの?」

 なんの気なしに問う一志。

「コーヒー飲んでるから」

そう言いながら、一志の脇に腰を下ろす裕也。

「え? コーヒー?」

「眠かったらカフェイン取るの基本でしょ?」

何を今更といった風の裕也。眠気はどうしたのか跳ね起きる一志。

「ずっるー! なんで? なんで、それを先に教えてくれないの!!!」

わななきながら一志が言う。

「そうしたら俺、こんなに片っ端からバイトを首にならずに済んだのに」

恨めしそうな一志の顔。

「ずるくないよ」

しかし、ふっと我に返る一志。

「あれ? でもカフェインって飲んでいいのか? だってビョーキって寝て治すんだろ? そのための薬だろ? 特にお前」

「背に腹は変えられないよ。眠いままに寝てたら何年たっても高校認定なんて取れないし」

「うーん、びみょーだ…複雑なことを考えてたら、脳が逃避行しだした、また睡魔がぁぁ」

そう言って一志は再び草むらに寝転ぶ。そうして寝転んだまま、難儀そうにデニムの尻ポケットから小銭を握りだす。そしてかろうじて裕也の手に渡す。

「裕也くん、お願い。ひとっぱしりカフェイン買って来て。掛け布団がないから草むらじゃやっぱ安眠できないよ。ごめん、パシられて、お釣りもちゃんと返してね」

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