第19話

笑う裕也。一志の灰皿作りのために缶コーヒーを飲みながら裕也が言う。

「ところで、前から気になってたんだけど、カバンに『No.1』って書いてるのってナニ?」

一志の商売用の薬入れの黒いセカンドバッグに書かれている白マジックの『No.1』という文字列のことを言っているらしい。

「…ひょっとして、第二、第三のカバンをまだ隠し持っているとか?」

恐る恐る一志に尋ねつつ、しこたま不安げな裕也の顔。一転一志。

「いやー、あれは一志の『一』で『No.1』。なんか景気いっしょ?」

一志の言葉にほっと胸を撫で下ろす裕也。

「まだまだ薬を詰め込んだカバンのストックが山みたいにあるのかと思って、びびってた」

裕也の言葉に一志は笑う。

「いえいえ、世の中そんなに甘かありませんぜ。これでもMAXに貯め込んでますから」

一志が指に挟んだタバコの灰が長くなりそろそろ危なくなってきた。危うげにタバコを持つ指を操作する。安心した様子で裕也がコーヒーを飲み干し、ゲップ一つ、一志に空き缶を差出す。

「はい、灰皿」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る